標本DATA
【種類】 ミヤマクワガタ Lucanus maculifemoratus ♂
【サイズ】 72.5㎜
【採集場所】福島県福島市(標高200m付近)
【採集日時】2022年8月10日 16:00
【採集方法】Lookingと虫網で採集(ミヤマのなる木)
【採集者名】Cassiopeia
この日は晴れ、かなり蒸し暑い日でした。今年最後の御褒美DAYとなりました。
なんと2022年最大のミヤマクワガタを5メートルほどの樹上にとまっているのを目視で発見。ゆっくりと虫網を伸ばして捕獲!
そうです!「ミヤマのなる木」からです。
久しぶりに72ミリを悠々と超えてくる福島市としては特大サイズ。大アゴが非対称、右の大アゴが少し短い。この短い方で計測して72.5ミリとれます。左大アゴで計測すると73ミリに近い。左中脚のフセツが根元から切れています。争いの中で折れてしまったのか?もうお盆も近いです…頑張って生き抜いてきた証ですね。
2022年にカシオペア君が採集した4頭のミヤマクワガタを比較してみると、人間の顔がみんな違うように!大アゴと頭部の張り出しだけを見ても全部違っています。
うちのカミさんに言わせると、全部一緒じゃない!何が違うの??って言われそうですが…苦笑
さて、カシオペア君は、クワガタが集まる様々な樹種を知っています。
私も大学生の時、卒論テーマが「ブナの林分構造」だったこともあり、大阪の金剛山を何度…植生調査をしながら登ったことか…。金剛山の樹木はすべてわかります。樹木は得意分野です。
全国のクワガタを長らく集めていますと、地域によってクワガタが集まる樹種が異なっていることがわかってきました。その場所の生息環境にあわせて、生きものは必死で生きているのです。興味が湧いてきますよね。
私の幼少期のホームスタジアム(奈良市)は、「クワガタ採集=クヌギを探せ!」コナラも樹液を出しますが、クヌギにはかなわない。25年以上も前になりますが…仙台市内に3年ほど住んでいました。クワガタに出会いたくて、大きなクヌギやコナラが目に入るたびに足を運んだのですが樹液は皆無。傷をつけるカミキリムシを寄せ付けない樹勢の強さを感じました。木が健康なのですね。その代わり、アキニレに集まることがわかりました。あのとき「クワガタ=クヌギ」という私の勝手な鉄板公式が崩れました。仙台では「クワガタ=アキニレ」です。ヤナギ類も良いと感じました。
沖縄によく出張しますが、地元で採集している子どもに聞くと「この木だよ!」と教えてくれました。その木を見上げると、なんと「アカメガシワ」でした。これに集まるの?と驚いたことを思い出します。ヒメオオクワやアカアシは、カンバ類やカエデ類に集まります。文京区だとクワ科のカジノキにも集まります。知れば知るほど面白い。
私は、なぜ植物に興味を持ったか?と言いますと、幼い頃、父の影響で蝶にはまっていました(もちろん、クワガタにもドはまりでしたが)。珍しいチョウチョに出会うためには、どうすれば良いのか?幼い頭で考えました。そして、幼虫の食草を探すのが重要だということに気付きました。そこから植物を調べ始めました。
興味を持つこと!何か目標ができたら、それを達成するためにどうすれば良いか考える!
これは大人ももちろんですが、子どもたちにとって素晴らしい学びのきっかけとなります。
カシオペア君が教えてくれたことですが、樹液の出方は、シーズン前半はニレ類、シーズン後半はクヌギだそうです。毎年、現場に足を運んで採集している人の言葉は、本で読む以上に説得力がありますね。もちろん福島での話です!地域や場所によって植生は大きく変わります。
2022年に、カシオペア君が採集したミヤマクワガタのほぼ半分が、「クワガタのなる木」から採集できたそうです。まさに「クワガタが鈴なりの木」ですね(笑)
これはお伝えしておかねば!
カシオペア君の採集は、決して根こそぎ採るようなことはしません。必要な分だけいただき、あとはすべてリリースです。毎年、楽しみたいカシオペア君は、生息環境のことを最優先に考えて採集をされます。私は、こういう人をProfessionalと呼びます。
Contributed by HIRO
2023 September