標本DATA
【種類】 ミヤマクワガタ Lucanus maculifemoratus ♂
【サイズ】 73.8㎜
【採集場所】愛知県新城市
【採集日時】2020年7月23日 7:00
【採集方法】Looking採集(クヌギ)
【採集者名】Masashi KIMATA
フジ型の迫力ある良いミヤマクワガタです。私が持っている愛知県産の大きなミヤマは、このフォルム(形状)が多い。
大切な片方の触角が切れています。食べ物を探したり、危険を察知したり、この触覚は非常に重要な役割を果たします。大アゴも擦れて、美しい毛は剝げ落ち、長く自然の中で生き抜いた個体だと思われます。このようなワイルドな個体に私はグッと魅かれます。
木全さんによると、2020年は、ミヤマの当たり年で、この個体より太くて大きなミヤマクワガタも採集できたそうです。体長は、この個体より0.5ミリほど大きく、頭幅が22ミリを超えていたそうです。どんだけ太いんですか!それを譲っていただきたかった(笑)
生きものですので当たり前に、たくさん採れる年、数は少ないけど特大個体が採れる年など、様々です。
クワガタから離れますが…
30年ほど前になるかと…
「新城市」と聞くと…良い思い出があります。クワガタと同じぐらい私が出会いたくて仕方なかった昆虫は、水生昆虫の王者「タガメ」です。
私が木曽三川公園で働いていた時、タガメを捕まえたくて…。名古屋の大須にあった熱帯魚屋さんのN部長にそんな話をしたら意気投合!一緒にタガメ探しが始まりました。岐阜県と三重県の生息地は知っていました。いるとわかっている場所に行くのは楽しくない。おまけに外灯に飛来するタガメを拾うという、あまり面白くない採集です。やっぱり網ですくいとってみたい!
よし!どこかにいるだろうけど場所がわからない愛知県で見つけてやろう!目標が決まれば、あとは目ぼしいところを見つけては探しに行く!という繰り返しでした。当時もかなり珍しく、滅多に見ることができない昆虫でした。今では環境省のレッドリストはもちろんのこと、2020年より「特定第二種国内希少野生動植物種」に登録され、「種の保存法」の保護動物に指定されています。
2人で探し回って、やっとタガメを見つけたのが新城市内でした。網で田んぼの脇の良さそうな水域をガサガサしたら、網の中にドンと3令のタガメが乗っていました。大きい。本当に嬉しかった。あの場所は、もう残っていないだろうなぁ~…。
その田んぼの持ち主であるお爺さまが、俺の目の黒いうちは、この稲(田んぼ)は守り抜く!兄ちゃんが好きなタガメも守ってやる!と…とても元気な方でした。もちろん、もうこの世にはいらっしゃらないと思います。あのとき、83歳と言ってられたので…。
私たちは採集するときは、必ず、土地所有者にお断りを入れてから行います。最低限のマナーでございます。
その田んぼの近くで地下水が湧き出ていて、その水を利用して稲が作られていました。当時、タガメを見つける為に、いろんな情報を集め、タガメが減少した理由なども含め勉強しました。農薬が使われている田んぼには、まず見られません。では、川の上流部に行けば良いと思いましたが、冷たい水にもいません。
当時は、農薬を使っていない田んぼは非常に少なく、そのお爺さんの田んぼも農薬は適度に使用していると言っておられました。では、なぜタガメが生息できたのか?それは湧水です。コンコンと水の湧き出ている付近の溜まり場にタガメは見られました。
生きものは、当たり前に気持ちの良い場所を選んで住んでいます。あの場所がタガメにとって住みやすい環境だったのです。水質、水温、水深、そして豊富なエサ…。
いつかまた、自然の中でタガメに会ってみたいなぁ~。
新城市で、今でもこんな大きなミヤマクワガタが採集できるのですから、まだタガメもどこかで命をつないでくれているような気がします。
Contributed by HIRO
2023 September