標本DATA
【種類】 ミヤマクワガタ Lucanus maculifemoratus ♂
【サイズ】 75.8㎜
【採集場所】北海道勇払郡厚真町
【採集日時】2022年7月31日 5:00~6:00
【採集方法】Looking採集(ハルニレ)
【採集者名】S. N.
北海道の厚真町は道央ベルトの南端にある地域で豊かな田園地帯と森が広がっています。このミヤマクワガタは、森の中の立派なハルニレで採集されました。Nさんは「沼の木」と呼んでいるそうです。朝霧の立ち込める早朝、大地にしっかり根を張った立派なハルニレが静かな水辺にそびえているのが想像できます。「千と千尋」の沼の駅を思い出しました。途中の沼原駅、そして銭婆の沼の底駅…。
そんな素敵な沼の木で採れた!
これぞ蝦夷型というミヤマクワガタです。75ミリを超える特大クラスに蝦夷型は多くないように思います。幼虫時代に寒い場所(低温)で過ごすと大アゴの形状がエゾ型になる。
となると北海道や東北の寒い地域、南の地域でエゾ型が出現しそうなのは少し標高の高いエリアで育ったミヤマでしょうね。私が所持している大きなミヤマたちは、標準型も少し混じりますが、多くはフジ型です。
寒い北海道も少しずつ温暖になっていることを考えると、蝦夷タイプはさらに少なくなるかもしれませんね。このミヤマクワガタの歯型によってClimate Change(気候変動)の影響評価をしてみては?という専門家の意見があります。生きものたちは体を変化させたり、場所を移動したり、様々な適応を図って生きています。
さて、この個体について!
シカ角のように広がった大アゴ先端がなんと雄々しい!蝦夷型フォルムが人気なのがわかりますね。右アゴ先が少しかけています。7月後半に採集されたミヤマです。様々な強者と戦っていたのかもしれません。野外で採れたミヤマの多くは、大アゴのどこかが欠けていたりします。この武器を様々に駆使して生き抜いているんですね。
上翅が少し開き気味ですが、触角、爪先がきちっと伸びて、満足な仕上がりです。美しいと思います。
Contributed by HIRO
2023 September