標本DATA
【種類】 ミヤマクワガタ Lucanus maculifemoratus ♂
【サイズ】 体長75.0㎜ 頭幅19.7㎜
【採集場所】東京都西多摩郡奥多摩町
【採集日時】2015年8月8日 22:00
【採集方法】木を揺すって落下した個体
【採集者名】Hiroaki TANOKURA
東京都のミヤマクワガタで75ミリクラスは少ないです。この特大サイズを採集されたのは78.6ミリのミヤマクワガタ(当時の飼育ギネスホルダー)を飼育羽化させた田野倉さんです。
とても好感が持てる方で、色々なことを丁寧に教えて下さりました。その節は本当にありがとうございました。
田野倉さんのお話によりますと、採集場所は渓流沿いの橋を渡ったところにポツンと立った水銀灯で、多くの採集者が良く知る1級ポイントだそうです。この水銀灯には6月の早い時期からミヤマクワガタが飛来します。この特大個体は8月に採れたので例外ですが…大型を狙うなら早い時期(6~7月前半)が良いそうです。
田野倉さんから採集状況のお話を伺った時、私の幼い頃の記憶が鮮明に蘇りました。
小学生の頃、よく遊んだ森(里山)のことを「裏山」と呼んでいました。裏山は大きなすり鉢状になっていて、どの入口から突入しても急な下り坂でした。そのすり鉢の縁に沿って大きな道路が走り、幹線道路ですので水銀灯が並んでいます。そのランプは大きな車道を明るく照らす為に設置されているため半端なく高くて大きい。夜になると、その灯りの周りにたくさんのミヤマクワガタがブンブンと飛び回っていました。10メートルほどの竿網を振り回せば採れると思いますが、当時、そんな良い道具があるわけもなく…。いつも道路脇の歩道から指をくわえて見上げておりました。では、なぜ採れないのに水銀灯を見に行っていたのか??
小さな子どもでも採れる場所があったのです。ある1本の水銀灯の隣に細い木が立っていまして、それを揺するとミヤマクワガタやカブトムシも落ちてくることがありました。木が細いので、小学生の私でもけっこう揺らすことができました。今から思うと、おそらくクスノキの幼木だったと思います。そのクスノキの上にはクズ(ツル植物)が覆いかぶさり、大きくないのですが、こんもりと鬱蒼とした木でした。水銀灯に飛来したクワガタがその木で休むのでしょうね。
この特大個体も田野倉さんが水銀灯脇の細い木を手で揺らすと落ちてきました。すごい落下音がしたため、カブトムシが落ちてきたと思ったそうです。手に乗せたら8センチ超えた~と思えた。そりゃこれだけ大アゴが発達したミヤマクワガタです。なんとなくその気持ちがわかります(笑)
この年(2015年)は、ミヤマクワガタの当たり年だったようで、田野倉さんの友人が神奈川県で76ミリ、八王子の高尾山で75ミリと驚くほどの成果を上げられたそうです。
標本を見て下さい。
大アゴの発達が素晴らしいと思います。巨大な2本の鉞を担いでいるような迫力のある個体ですね。グッと湾曲し美しいウェーブを描いています。ここまで湾曲したミヤマクワガタは珍しい…湾曲したノコギリクワガタのイメージと重なります。
格好良すぎるので、標本作成も気合が入りました。出来栄えはかなり良いと思います。
Contributed by HIRO
2024 March