標本DATA
【種類】 ミヤマクワガタ Lucanus maculifemoratus ♂
【サイズ】 体長74.1㎜ 頭幅20.0 ㎜
【採集場所】熊本県玉名郡南関町
【採集日時】2016年7月12日 7:00
【採集方法】Looking採集(クヌギ)
【採集者名】A. N.
立派で美しいフォルムです。頭幅が20ミリを超えてくると、一気に迫力が出てきますね。耳状突起が左右に広がる私好みのタイプです。太い第一内歯と大アゴの太さも格好良いと思います。
さて、クワガタは種類によって挟む力が違うことをご存じでしょうか?
ミヤマクワガタの挟む力は、ヒラタクワガタなどと比較するとかなり優しいのですが、それでも…この立派に突き出た第一内歯で挟まれるとかなり痛いです。小学生の頃、友達にあんまり痛くないから!ミヤマは大丈夫やから!なんて…そそのか(だま)されて、挟ませてみたら…出血まではいきませんでしたが、良い感じで指に深い穴(くぼみ)ができたことが思い出されます。
大アゴの基部の筋肉がより発達したクワガタは、当たり前に挟む力が強い。そして、挟む力は、その生活スタイルにも起因しています。例えば、クワガタの中で挟まれて間違いなく痛いのは、ヒラタクワガタだと思います。大型のオスはもちろんのこと、小型のオスでも挟まれると、高確率で出血します。おまけに一度挟んだら、なかなか開放してくれない…。小学生の頃、大型のヒラタクワガタに挟まれて10分以上、放してもらえず、指からは血がポタポタ、額からは脂汗タラタラになったことが思い出されます。強いヒラタクワガタは木の洞を生活場所とします。自慢の大アゴを使って小さな洞を削って広げたり、こじ開けたりして、自分好みの場所にリフォームしていきます。
ミヤマクワガタの挟む力が弱い理由の一つとして、幼虫時代の生活場所(食べ物)が起因していると考えられます。ミヤマクワガタの幼虫は、かなり腐朽の進んだフレーク状の朽ち木を食べて育ちます。どちらかと言うと、カブトムシが好む腐葉土のような感じの発酵が進んだフレークを食べているのです。他の多くのクワガタは朽ち木をバリバリと食べて、朽ち木の中で部屋(蛹室)を作って蛹になります。もしミヤマクワガタは朽ち木の中で蛹になると、おそらく多くの個体がそこから脱出できないと考えられます。大アゴの挟む力が弱いため木を割って脱出できないのです。そんなわけで、脱出しやすい、かなり発酵したフレークの中で蛹になります。
ただ、ミヤマクワガタだって挟む力が強い方が有利だと思います。それは良い餌場(樹液周り)を確保するため、またはメスを巡って戦う必要があるからです。
クワガタの挟む力に興味のある方は試してみて下さいませ。実体験は大切です。もちろん、覚悟をして挑んでくださいませね(笑)
Contributed by HIRO
2024 May