標本DATA
【種類】 ノコギリクワガタ Prosopocoilus inclinatus ♂
【サイズ】 69.05㎜
【採集場所】福島県福島市
【採集日時】2023年7月19日 11:30
【採集方法】木を揺すって採集(ヤナギ類)
【採集者名】Cassiopeia
すでに掲載している丸々とした大きな♀を、おそらくメイトガードしていた♂でございます。Cassiopeia君が木の上の方に巻き付いて垂れ下がっているツル植物を引っ張って振動を与えると一緒に落ちてきてくれました。福島市では特大クラスなのに、メスよりも採集を後回しにされたオスです(笑)
それでも福島市内でこのサイズはかなり大きい。前胸背板と上翅の隙間をキッチリ詰めて69ミリをほんの少し超える特大サイズになります。
本個体を見て下さい。美しく湾曲した大アゴを持っています。ノコギリクワガタは大型になるほど曲がります。曲がり具合は様々ですが、基本的に体が大きいほどググッと曲がるのです。
なんで曲がるのでしょうね?格好良いからいいのですが気になりますね。体の形、色合いなど、すべてに意味があるはずです。生き抜くために有利となるように、そういう形や色合いに進化?したのだと思います。
さて、ノコギリクワガタの湾曲です。色々と調べてみたのですが、これだ!と納得できる答えには到達できませんでした。個人的に可能性は少しあるかも!と思ったのは、カブトムシとの戦いを有利に進めるため!という説明(仮説)を見つけました。何度もカブトムシと戦うノコギリクワガタを見かけたことがあります。樹上(樹液周り)だと、ほぼカブトムシには勝てませんが、ときどき、湾曲した大アゴでカブトムシを挟みこみ、押しのけた個体を見かけました。大アゴで鷲掴みにする感じです。私の実体験も後押しして、なるほど!一理あるかも!と思いました。
ただ、地域別に並んだノコギリクワガタ(標本)を見ていると、また疑問が…北海道のノコギリクワガタはかなり湾曲する個体が多く見られます。北海道は、今でこそ(残念ですが)カブトムシが見られますが、昔は分布していませんでした。北海道のカブトムシは、人間が持ち込んだ個体が繁殖してしまった国内外来種となります。1970年代から80年代にかけてカブトムシが北海道に定着したと言われています。となると…50年以上前は湾曲した大アゴを振るう大きな相手(カブトムシ)がいなかったわけです。
こうやって集めた情報をベースにして色々と推察して行くことは、思考能力を高め、子どもたちの良い学びにつながると思います。様々な生きものたちが、私たちの身近に暮らしています。興味を持って、観察して、そして何か疑問を持ったら考えてみて下さい。
Contributed by HIRO
2024 June